第七話 九歴 文月

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 だが―― 「ま、待ってぇ~。  ちょ、ちょっとだけ休憩させて。  お願いだから、ちょっと待ってってば。  少しだけ、  少しだけだからぁ~」  と卯月が出遅れる。  X君が、 「何をやっているんですか?  社長、もう、へばったんですか?  情けない。  特訓はまだ始まったばかりですよ。  この間の決意はどこへ行ったんですか?  社長がいの一番に音を上げてどうするんですか?」  と言った。  現在、【卯月クエスト・オフィス】では、専属クエスト・ガイド6名による共同訓練が行われていた。  参加しているクエスト・ガイドは――  九歴 卯月(社長)、  X君、  弓酒(ゆみさか) 美海(みうみ)、  リタ・ウェーバー、  鈴里(すずさと) 加奈子(かなこ)、  宮崎(みやざき) 龍花(りゅうか)だ。  事務をしている4名――  ブリット・ウェーバー、  スティーブ・ウェーバー、  皆川(みながわ) 彰人(あきと)、  桜咲(さくらざき) 真尋(まひろ)には記録係になってもらっている。  ――以上の10名が【卯月クエスト・オフィス】の全従業員になる。  クエスト・ガイドと言っても、それぞれでレベルが異なるので、真尋女史にそれぞれのクエスト・ガイドに合わせた特訓メニューを考案してもらい、それにそって合同トレーニング中だったのだ。  言い出しっぺである卯月が真っ先に弱音を吐いたので、これは無いとしてX君がたしなめたのだ。  X君としては、この合同訓練には並々ならぬ意気込みを持って居た。  実は、この訓練データ――全員のものではなく、卯月だけのデータなのだが、とある研究所に送られる事になっているのだ。  【卯月クエスト・オフィス】では、卯月だけ――なのだが、他にも5名――他社から同じ様にサンプルデータが研究所に送られる事になっていた。  その5名と卯月の研究はクエスト・ガイド協会にとって大変興味のある事だった。  では、この6名は何故、選ばれたのだろうか?  卯月以外の5名とは誰のことなのだろうか?  それは――  他の5名とは卯月の姉や妹達の事だった。  卯月を含む、九歴6姉妹が今、国の最高峰の研究チームから注目されているのだ。  ただでさえ極端に難しい、クエスト・ガイドの資格試験――それをハンデがあったにも関わらず6名全員が合格した点、  さらにトップを走る長女、睦月(むつき)や次女、如月を初めとする6姉妹のクエスト・ガイドとしての活躍は目を見張るものがあるとして注目されたのだ。  国の研究チームの研究対象となる決め手となったのはやはり、如月によるΩランクのモンスターからの脅威を回避した功績が挙げられるだろう。  国は本格的に九歴姉妹のデータを元にした人造クエスト・ガイドの開発に乗り出したのだ。  基礎データやほとんどの部分は大体完成していて、後は、ベースとなるクエスト・ガイドのデータを姉妹の誰にするか?という所でもめていたのだ。
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