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 ○月×日  狼男ががっくりと肩を落としながらやってきた。 「先生、一体全体、どうして世の中、こんなになっちまったんですかね……」狼男はぼんやりと窓の外を見ている。今晩は満月だった。しかし、狼男は溜め息をつくばかりだった。「これじゃ、遠吠えをする気にもなりませんよ……」 「満月の夜なのに、そんな事じゃ、いけませんね」私は夕食で使った銀製の食器を片付けながら言った。「とにかく、お話ください」  狼男はテレビのニュースを見ながら、大きな溜め息をついた。 「テレビもそうですが、こう科学力が発達すると、神秘的だと思っていたものの正体が、実は大したものではないなんて証明される事も増えました……」 「そうですね。でも、その恩恵は受けていますよ」私は言った。「特に医療などはね」 「でもね、先生。私にとってはとても大切な月が、人間の手によって、どんなものなのか、解明され始めているんですよ。単なる物質だそうですよ、月は! そんなのを見て一々変身する自分が、情けなくて、情けなくて……」
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