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 ○月×日  日本の幽霊が数体ふらふらしながらやってきた。 「先生、時代って酷いものですねえ……」幽霊の一体が力なく言った。「何だか嫌になってしまいましたよ……」 「すっかりお疲れのようですね」私は言った。「どうなさったのか、お話ください」  幽霊達は大きくうなずいた。上目遣いで凄絶な表情だ。 「でも外見はかなり迫力がありますよ」私がお世辞を言うと、幽霊たちは不気味な笑顔を作って見せた。「それだけの迫力がお有りなのに、心配事ですか」 「そうなのです。……私どもは夏の風物でもあったのです。しかし、今はすっかりと季節に関係なく扱われるようになりました。やれ、自縛霊だ怨霊だ憑物だ心霊写真だ心霊ビデオだと、それこそ一年中呼び出されております。これも時代と割り切っても、もうくたくたで……」 
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