甘やかされる

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部屋に着くなりベッドに腰掛けた永遠は 「ほら、来いよ」 両手を広げた トクン また違う永遠の一面にいちいち胸がトキメク 「ほら」 催促する顔も湯上りの濡れた髪も 私を乱して仕方がない 「来いよ」 三度目の声掛けに 吸い寄せられるように近づくと 「キャ」 僅かに上がった口角を見た瞬間 腕の中に囚われた 「やっと独り占めできた」 耳元で聞こえた永遠の声が甘すぎて 顔に熱が集まるのが分かる 「真っ赤」 態々指摘することもないだろうに 簡単に恋愛初心者の私を揶揄う 「・・・狡い」 「ん?」 「永遠だけ冷静で狡い」 間近の顔を見る勇気なんてなくて 膝の上に横抱きされた恥ずかしい状態の自分の太腿を凝視する 16の癖に余裕こきやがって・・・ 脳内で悪態をつくヘタレ野郎の私の耳に入ったのは 「俺も」 少し震えた永遠の声だった 「え?」 ウッカリ顔を見上げると 熱い視線とぶつかって心拍数が上がる 「ほら」 手を取られて強引に永遠の胸に押しつけられた 「・・・っ」 手のひらに感じたのは私と同じだけ早くした永遠の鼓動だった 「俺も千色と同じくらい緊張してる 好きな女と一緒に居るのは 俺にとっても初めてなんだ」 『初めて』の言葉が頭の中を占領する これだけの容姿の永遠だから モテることは容易に想像できる 学校でも女子生徒に囲まれているところしか見たことがないんだもの 頭の中で繰り広げられるお喋りに合わせていた視線が外れると それを遮るような永遠の声に もう一度視線が交わった 「好きになった女は千色が初めてだ」
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