出会い

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私と繭香のお気に入り 【Moon】は二ノ組の経営するバーで このビルの最上階を全てを占有している 一般客の入る大きなフロアは 窓向きのカウンター席と 角度によって顔を合わせ難い作りをしたボックス席があり 人気の高さから週末はまず座れない そして・・・店の入り口に立つセキュリティによって他の客と顔を合わせないように通されるのが 店の残りの半分を占める個室だけが並ぶVIPフロア その個室の半分は夜景を眺められるように窓際に作られており 何度訪れてもその美しさに魅了される 毎回“外向き”を希望するけれど 出遅れた週末は埋まっていてガッカリすることが多い 個室を出ると通路はダウンライトと足元に多く点く間接照明で 客同士のすれ違いにも互いを意識せず済む配慮がされている その配慮からも分かるように此処へ来るお客さん全てが白夜会絡みということでもないようだ 学生の頃から繭香と私のお気に入りと化したこの店は 何かあった時に対処できるからという理由で どちらの両親にも許しをもらっている 22歳にもなって親の許可が必要なのか・・・ それは、愚問だ ・ 「千紗さんてさ、そろそろ結婚じゃないの?」 「んーーその話を聞いたことない てか・・・興味ないからねぇ」 「千色・・・あんたさ 興味なさ過ぎよ〜ククッ」 可愛らしい色のカクテルを 個室の灯りに翳しながらクルクルとグラスの向きを変える 「嫌いじゃないのよ?千紗のこと 嫌いじゃないけど、申し訳なさそうな顔されると小馬鹿にされたように感じるの」 「あ、それ分かる〜うちの姉二人も 何かと枕詞みたいに“ごめんね”って 付けるのよ、そうすりゃ機嫌を損ねないとでも思ってんのかねぇ」 家族形態もよく似ている繭香とは 共通の悩みも多くて そこも仲良しの所以だと思う 「ちょっとトイレ〜」 勢いに任せて立て続けにカクテルをオーダーした所為で 少しフワフワする心地良い気分のまま立ち上がると個室を出た
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