顔合わせと離別

7/10
前へ
/171ページ
次へ
「それがどうした?」 後藤さんの声に弾かれるように 母は顔を上げた 「・・・え」 「森谷の長女が身体が弱いことと 親への報告が無いことに何の関係がある」 後藤さんの柔らかかった物腰が一変して 低いドスの効いた声になった 「「「・・・っ」」」 「娘の身体の弱さを理由にして 何でも許されると思うなよ?」 どんどん崩れていく後藤さんの口調に合わせるように 張り詰めている空気が重く冷たく変化した 「それにな・・・ 生まれた時から身体弱いって・・・ 何の病気だ?調べたのか?」 「「・・・え」」 ・・・え 後藤さんは何を言ってるんだろう 探ろうとする頭の中はあまりの衝撃に処理能力を上回ったのか 停止してしまった 千紗を見る森谷の両親の表情が驚きに変わったところで 「小児喘息は10年も前に完治済み 他に何の病が長女を蝕んでるんだ?」 ククと喉で笑った後藤さんを 千紗が悔しそうな目をして見上げる それに視線を合わそうともしない後藤さんは もう一度私を見て薄く微笑んで頷いてくれた ・・・・・・どういうこと? 千紗の病は仮病? 『完治済み』という現実が 衝撃的過ぎて瞬きすら忘れる 「土岐組との縁組は通達で解いた 今の口振りじゃ 若姐さんがそれを蹴った所為で森谷を露頭に迷わせたように聞こえたが?」 「・・・・・・それはっ・・・ 千紗が身体が弱いから、千色が土岐組の息子と結婚して森谷を継ぐと思ってきたもんで イキナリそれを解かれても・・・ うちは千紗を後継ぎには考えたこともなくて・・・難しいかと・・・」 この期に及んで話を蒸し返してきた母は媚びるようにお義父さんを見た 「クッ」 ここまでリアクションの無かった お義父さんが吹き出した
/171ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4444人が本棚に入れています
本棚に追加