出会い

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「クッ、大丈夫か?」 喉でクツクツと笑われて なんだか恥ずかしい 「あの・・・」 「ん?」 「離して」 「あ、あぁ」 そう言ったのに 囚われた腕の中からちっとも解放されなくて 仕方なく間近の男性を見上げた ・・・・・・ゔぅ 輪郭はハッキリしているのに 肝心のパーツがボヤけて見える それに・・・ 未だ私を抱き留めたままの男性も 私を見下ろしていることだけは確かで なんだか居心地悪い 「な〜に見つめあっちゃってんの?」 背の高い男性に遮られて気づかなかったけれど 他にも男性が居るようで その茶化すような軽い声に 「・・・るせぇ」 間近の男性から低い声が降った 「ねぇねぇ彼女名前は?」 腕の隙間から声の主を見ようとしたけれど 依然囚われた腕の力は緩まる様子もなくて 「いや・・・あの・・・」 もうそろそろ解放してくれませんか?と もう一度間近の男性を見上げると 少し傾いたように見える頭が 少しピントが合った刹那 唇に温かな感触がした 「・・・んっ」 キスされていると頭の回路が繋がった時には 既に男性は唇も身体も離した後で 「・・・ワ、やるじゃん」 そのことに気付いたもう一人の男性によって盛大に揶揄われている 「・・・・・・バカっ」 よく見えないけれど 身体一つぶん離れただけの男性を睨み上げると こみ上げる涙をそのままに 繭香の待つ部屋へと駆け出した
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