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バーン
勢いよくドアを開けると
「・・・っ、ビックリした」
驚いた繭香の声がして
なんだか更に悲しくなった
「ど、うしたのよっ」
「ま、ゆ、かぁーー」
体当たりする勢いで抱きついて
ワンワン声を上げて泣く私を
繭香は抱きしめて頭を撫で続けてくれた
「で?」
「・・・」
「どうしたのよっ」
「・・・トイレ」
「トイレがどうかしたの?」
「トイレの帰りに・・・」
少しずつ記憶を辿るように吐き出した
「えーーーーーーっ」
「初めてだったの、に」
考えれば考える程
悲しいより悔しいが立った
別に許婚のためにファーストキスを取っておいた訳ではなくて
せめてもの想いを
最後に凱へ打つけるつもりでいた
「・・・悔しい」
「なんか、腹立つ」
同じように腹を立ててくれる繭香に
少しホッとして
「なんか、覚めちゃった」
良い感じに酔っていたはずなのに
あのアクシデントでそれも何処かへ吹き飛んだ
「飲み直そ〜」
「うん」
そこからまた
穣さんのお迎えが来るまで
ひたすらカクテルをオーダーしまくり
記憶の飛んだ二人は
繭香は穣さんに、私は運転手の飛田さんに抱き抱えられて店を後にしたらしい
だから・・・
さっきのシルエットしか知らない
ファーストキスを奪った男性が
私のことを探しているなんて
全く知らなかった
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