お嬢は一途?

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「千色ちゃん、おかえり」 後部座席の半分に座っていたのは 姉の千紗だった 「・・・・・・ただいま」 「今日は、別人みたいだね」 「・・・そぉ?」 「うん、面接どうだった?」 「・・・うん、ま、それなり」 「そっか、千色ちゃんは凄いね」 「・・・・・・そんなことないよ」 そこまで言うと 視線を窓の外へと移した そうすると千紗は私には話しかけてこない それを知っているから態とそうした ・・・性格悪いよね・・・私 千紗は身体が弱いから いつも家で家族にちやほやされて なにも出来なくても 欲しい物はなんでも与えられていた もちろん 姉妹で差をつけられたと思ったことなんて一度もない だけど・・・ 千紗と私が決定的に違うのは 千紗は“我慢”をしたことがないってこと 家族が出掛ける日でも 千紗の体調が悪ければ中止になった 私の誕生日でも 千紗の体調が悪いと日にちをズラされた 同じ点数を取っても 学校を休みがちな千紗は褒められた だから・・・ 私にとっての千紗は 上手く言葉では言い表せない相手 表面上は仲の良い姉妹だけれど たぶん・・・胸の中では真逆なことを思っている それが決定的になったのは 凱が私に付くと決まった日だった 夜遅くに部屋にやって来た千紗は “お願い”と繰り返し 凱を譲って欲しいと私に懇願した 普段なら聞き入れる話を あの時は頑として譲らなかった そして泣きながらも 諦めたのは千紗だった それなのに 偶にこうやって凱について来て 私のテリトリーに入りたがる千紗 『可哀想なんだから・・・』 母はいつもそうやって私に我慢をさせた だから・・・ 24歳になっても 全てが意のままに動くと勘違いしている 実の姉への私の醜い想いを 流れる景色に捨てながら この後の昼食を想ってため息を吐き出した
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