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幽霊の夏
テレビが流す幽霊の映像にはやっぱり緊張してどくどくと自分の心臓が削られていく音がする。見えないものを見たいという空虚なニーズに応え、番組は嘘くさく張り詰める緊張感と子供の演技じみた恐怖をお届けする。そこでエンタメに操られていた自分に気づき、反吐がでる。それでも暇を持て余して自堕落な一日を送る今日、私はなんとか虚しさを超非現実で埋めたかった。これといってすることはなく、時間感覚やら人間らしい規則正しさが忘却されていく私の夏休みもつまるところ超常現象みたいで、心霊番組と大差なかった。
どうやっても毎年来る夏休みが嫌いだ、まだ学校のつまらない授業を聞くほうがいい。
それなのにこの夏しかできないことをしようだとか、一度きりの夏を最高にしようだとか、夏に妙な全力を出そうとする高校の奴らはみんな寿命一ヶ月の蝉なんだろうか。幽霊の夏と蝉の夏、はたしてどっちがマシなんだろう。
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