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なんのことだろう。ああ、事故だ。私はあの山道で事故に。でも悪いのはヒロユキじゃない。あの運転手だ。と思っているうちに、
(むらのひみつ きいただろ)
どうしてわかったのと訊き返すよりも早く、
〈おれはみてしまった〉
〈だからめがみえなくなった〉
〈あのまもりがみのせいだ〉
〈ひみつをまもる まもりがみの〉
忙しく動く彼の指の動きを脳内で文字に変換するうち、あの三猿のような像の姿が甦った。見ざる聞かざる言わざるのポーズ……。
そこで気づいた。慌てて体を起こす。全身に激痛が走るけど、そんなことに構っていられない。
そこは集中治療室だった。幾つもベッドが並び、その間を何人もの看護士が慌しげに動き回っている。
でも、何も聞こえなかった。辺りは静寂に包まれている。
思わず私は叫んだ。その声すら私の耳には入ってこなかった。
あの村の秘密は永遠に守られる。だって漏らせばしゃべることもできなくなるのだから。
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