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後ろの理解者・ep3
−パパは日曜大工が大好き。DIYとどう違うの?って聞いてもさっぱり要領を得なくて、頑に日曜大工って言い続けてる。でも、よく行くホムセンの看板にも「日曜大工の店」って書いてるし、別にいいか。どうでも。
「おーい紫音、一緒に来るか?」
−パパが呼んでる。またホムセンでしょ。ウチの愛犬兼番犬の(わっ、ケンまみれだ)、抹茶ラテの犬小屋のことかな。おとといの大雪でぶっ潰れたから直すって言ってたもんな。ドーベルマンの犬小屋は大きいし大変と思うけど…暇だし付き合ってあげますか。
−店に着くなりパパは店長の健さんと話し込む。あらまあ、こんなとこまで無駄にケンまみれね。けど医者なんていくらお金があっても、使うのはせいぜい日曜大工か。車もタントだしね。まあタントはドアがガバッと開くのが素敵で使いやすいけど、もう少し娘にお金を使ってよ。
−だいたいね、来るたび工具の話で1時間盛り上がるとか、私にはワケわかんないもん。電動ドリルなんてウチに何本あるんだか。何のプレイに使う気なのよ。ま、盛り上がってる間、私は包丁や丸鋸にうっとりして半笑いになってるからいいけどね。
−でも今日は様子が違う。パパの気合いが違う。ちなみにパパはしーさんって呼ばれてるよ。四之宮だからしーさん。
-そういえば詩乃が先月キャバクラに体験入店した時、お客さんをそう呼んだって言ってたな。酷い女子高生よね。名前を覚えやすいのかな?いや本名は覚えられないよね。それじゃあダメじゃん詩乃。
「こりゃいいブツだね。犬小屋にピッタリだ」
「しーさん、さすがに目が高いね。国産樫よ。これなら少々の雪じゃ潰れねえよ」
「木目も真っ直ぐ通ってるし、これにするか。あとは値段だな」
「相変わらず医者のくせに渋いなあ。ま、1割引きかな」
−本当にセコいんだからパパは。いいだけ患者や保険から掠め取ってんでしょうに。とはいえ、値切り合戦は徐々に無駄な白熱を呈する。最初は呆れつつも、いつしか私は闘争がもたらす高揚感と暴力的なヴァイヴに引き込まれていた。この迫力、もはや経済戦争?
「もう少し勉強してよ健さん。今日の予算的にちょーっと高いんだわこの板。1、2枚じゃ済まないんだからさあ」
「国産材だから下げらんないんだって。1割!」
「そこをなんとか」
「うーむ…いや、これはなあ…」
−2人が深刻な顔で考え込む。次の言葉を発したのは、ほぼ同じタイミングだった。
「まけられない!」「板高い!」
-ああ…これが男の、負けられない闘いなのね。素敵。私にはワケわかんないけど。
-でも頑張ってパパ!そうそう、抹茶ラテが雪で震えて死にそうだったから、あと7秒で会計してね❤️
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