エピローグ

5/5
前へ
/23ページ
次へ
 答えは出ないけれど、  象の名前を携えて、僕は生きていく。  兄が象れなかった夢を、僕が──俺が叶える。  胸に刻むように手を当て、目を閉じる。  瞼の裏には紫陽花のように無数に広がる痣が浮かび上がっていた。  胸に冷たい痛みを感じながらまたゆっくりと、瞼を開いた。  誓うように、白い雲が剥ぎ取られた空を見上げる。  ぐいっと青いユニフォームの皺を伸ばして、透はスタジアムに一歩を踏み出した。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加