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答えは出ないけれど、
象の名前を携えて、僕は生きていく。
兄が象れなかった夢を、僕が──俺が叶える。
胸に刻むように手を当て、目を閉じる。
瞼の裏には紫陽花のように無数に広がる痣が浮かび上がっていた。
胸に冷たい痛みを感じながらまたゆっくりと、瞼を開いた。
誓うように、白い雲が剥ぎ取られた空を見上げる。
ぐいっと青いユニフォームの皺を伸ばして、透はスタジアムに一歩を踏み出した。
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