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エピローグ
「そろそろ行くぞー」
ロッカールームに鳴り響いたキャプテンの声で現実に引き戻される。
ページの端をぎゅっと握り締めてから、ゆっくりと瞼を開いた。
途端、『ジャパンの新エース誕生か?』という文字が視界に飛び込んでくる。大仰な言い方だな。心の中でつぶやいて、嘲るように小さく笑った。
改めて、雑誌を少し遠ざけて俯瞰する。
見開きページの右側にはシュートを放った後の自分の写真と、大見出しに書かれた文句の続きに『芹沢象』という名前が大きく印刷されていた。
透は二つを順に目で追って、静かに伏せた。
強く確かなトラップの音が耳の奥で響く。
本当はここに在るはずだった兄の姿を
慈しむように、懐かしむように
その確かな一音一音に思い起こした。
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