プロローグ

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 その試合で解説を務めていた元日本代表・勝沼慎吾さんは感慨深げに彼の事をこう語った。 「彼のプレーはまるで透明な水のようだね。水はどんなものをもいなすし、嵩が増せば破壊力もあるだろう? 満たされた水の中に一雫を落とし込むように静かなトラップ、水面を駆ける光のような速さで流麗にすり抜けていくドリブル、激流のごとく轟音を響かせるほどの破壊力を持ったシュート。一つ一つの動作が自然に溶け込むような透明さがあって、まるで清流を体現しているようだ。一見軽やかで簡単そうにやっているようだけど、実はかなり慎重で繊細な技術が必要だよ。それをあんな自然にやってのけるとは、圧倒的な攻撃センスだね。まだまだ飛躍する気がするなぁ、彼は」    この言葉通り、彼はそれ以降の試合に連続出場し、場数を踏んだことで『透明なプレー』の技術の完成度を高めつつあった。  さらにその年、年間30試合中13得点とシュートの成功率を上げ、「あいつの足元にボールを呼び込めば終わる」とまで言わしめるほどのプレイヤーへと成長した。
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