エピローグ

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「象」    チームメイトに呼ばれて、雑誌を放り投げるように手放す。選手のほとんどはもう出払ってしまっていて、あとは透を残すだけだった。足早にロッカールームを出ると、青いユニフォームのチームメイトたちのあとに続いて透は歩き出した。いくつものスパイクが床を鳴らすのに混ざりながらもいっそう凛々しい音を立てて、長い廊下を進んでいく。  中ほどを右に曲がると、スタジアムの入場ゲートが煌々と白い光を湛えて透たちを出迎えていた。近づくにつれ、緑色のピッチと埋め尽くされた観客席、白い雲に覆われた空が鮮明に目の前に飛び込んでくる。  次々と入場していくチームメイトの中、透は入場ゲートの一歩手前に立ち止まって、足元を見つめた。  所々が黒く汚れた赤地に白ラインのスパイク。象の置き土産に包まれた足を、見つめていた。
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