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透き通る想い
ばかみたいだ。
リビングの床に横向けで倒れて泣いている兄を見ながらそう思った。近くに転がっている車椅子が、そう思ってはいけない、とでも言うようにフレームを鈍く光らせる。ハッとして駆け寄り、僕はもう何度目かになる台詞を吐いた。
「大丈夫?」
右腕で顔を覆いながら泣いている兄に返事ができるわけがなかった。殺した嗚咽が震えとなって肩を揺らす。倒れた拍子にはだけたのだろう、露になった背中には紫陽花のように転々と広がる青痣があった。日に日に増えていく小さな花房は、呪いのようにも思える。
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