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「おい!翔!降ろせ!」
「足痛めてて歩けないんだろ?我慢しろ。」
「だからって他に方法があるだろ!」
「なに?お姫様だっこが恥ずかしいのか?かわいいやつだな。」
かわいいと不意打ちで言われ一気に顔が熱くなる。かわいいだなんて言われて喜ぶはずがないのに、こいつだと何でこんなに嬉しく感じてしまうんだ。
俺は自分の顔を見られないようにと咄嗟に手で翔の顔を押す。
翔はバランスを崩しかけ「危ない!危ない!落とすから!」と叫ぶ。その姿に思わず笑ってしまった。
「ていうか俺と付き合ってるってどういう事だよ!」
「そりゃ、彼氏だったらお前との邪魔してもいいってあいつが言ってたから。
しばらく恋人のふりをしてあいつも諦めれば万々歳だろ。」
「そうかもしれないけど、翔はそれでいいのかよ。」
「逆に何の問題がある?俺はお前の力になりたいんだよ。協力させろ。」
キラッキラの笑顔でそう言われるとなにも返せなくなる。
俺は翔の腕の中で戸惑いながらも小さく頷いた。
そんなこんなで始まった翔との恋人ごっこ。
ふりとはいえ恋人なったことで心臓はバックバクに鳴っている。
翔の胸からも心臓の速い鼓動が聞こえた気がしたが、自分の鼓動が強すぎてよくわからなかった。
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