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翔が甘い。照れる。どうしよう。
動揺を必死に隠す俺を見て翔が可愛い可愛いなんて言いながら頭を撫でてくるからますますいたたまれなくなる。
だから、俺たちは両想いになった嬉しさですっかり忘れてしまっていた。
この場には2人だけではないことを。
「ねぇ、俺のこと空気にしないでくれる?」
その声の主は勿論光で。
光は殴られた頬を真っ赤に腫らしてこちらを見ていた。
「どんな茶番だよ。結局俺はただの当て馬って訳?俺かなり本気だったんだけど、ひどくない?」
「ごめん。俺、光と一緒にいて楽しかったよ。でも、それは友達としてで俺が好きなのはやっぱり……」
「あーあー待って待って。いいよ、それ以上言わなくて。これ以上俺を惨めにさせないで。」
「ごめん……」
俺に好意を寄せてくれた人だ。
仮にも自分の好きな人が別の人と両想いになる瞬間を見るのは流石に堪えただろう。申し訳なくなり、言葉が続かない。
どうしようもなく光を見つめる。
すると光はしょうがないな、と呆れたように言った。
「なーんか2人見てると今は入る隙無さそうだし、諦める努力はしてあげるよ。優しいでしょ。優しい俺のこと好きになっちゃう?いいんだよ、彼氏が嫌になったらすぐおいで。俺が慰めてあげるから。」
「ひっ……!」
「おい!てめぇ!」
光はそう言い俺に近づくと、耳をべろりと舐めあげ保健室から出て行った。
とりあえずは解決したということで良いと思いたい。
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