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スポーツ広場に着くなり、みつあきくんがサッカーボールを地面に置き、義足の足でボールを蹴り、ゆういちろうくんにパスを出した。
正確なパスに、ゆういちろうくんは驚いた表情を浮かべながらボールを止めた。
「感覚を取り戻すのに時間がかかったけど、取り戻したらあっという間だよ。だって、おれ元々サッカー上手かっただろ?」
みつあきくんが笑いながら言った。
「凄いよ。力も前と変わらないように感じるし。」
ゆういちろうくんはそう言いながらボールを蹴り返した。みつあきくんはボールを義足で止めた。
「こうやって、またゆうとサッカーしたかったからな。…お前にちゃんと言えて良かったよ、引っ越すことを。」
「昨日言ってくれれば良かったのに…。」
「…なんかさ、引っ越すことを伝えて、そうなんだ、っていう一言で終わっちまうんじゃないかって…何か怖さがあってさ。」
みつあきくんは、視線をボールに移し、元気のない声で言った。
「…みつくん。」
「ゆうがさ、あの事故の後からおれと距離を置いてるのは分かってる。ゆうは自分に責任を感じてるんだろ?確かにおれが逆の立場だったら、おれもそう感じるかもしれない。でもさ、本当におれはゆうを恨んだことはないし…ゆうがサッカーチームを辞めたことを知った時は本当に悲しかった…。」
みつあきくんは、自分の着ているユニフォームを見つめ、少し涙ぐみながら言った。
「…あのチームは、みつくんと一緒にやることに意義があったんだ。…本当はサッカー自体をやめるつもりだったんだけどさ…考えたら、やっぱり僕にはサッカーしかなくて…でも…みつくんにはそれを言えなくて…」
「ゆうはサッカーを続けろ!!」
みつあきくんが大きな声で叫んだ。
「おれだってサッカーの試合に出ることを諦めてはない。まぁ、ゆうと同じフィールドは無理だろうけどさ、自分の限界まで頑張りたいんだ!だから、ゆうはおれに気を使わず、自分のやりたいようにサッカーを続けて、将来はプロになってくれ!」
「…みつくん。」
すると、みつあきくんは背後に振り向いて、丘の頂上を見つめた。ゆういちろうくんもつられて視線を向けた。
「…ゆう。ちょっと丘の上まで行かないか?」
「え?…あ、うん。」
ボールを広場の端に置いて、歩き始めたみつあきくん。ゆういちろうくんは、何だろうと思いながらも、ゆういちろうくんに並んで歩き始めた。
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