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無言で歩き続けた二人。
頂上に向かう遊歩道の中腹で、みつあきくんは口を開いた。
「…おれ、黄色いポストに逢ったんだ。」
「え?」
ゆういちろうくんは、黄色いポストという単語にドキッとした。
「…黄色いポストにさ、聞いたんだ。“おれはまたサッカーが出来るようになりますか?”って。」
ゆういちろうくんは、胸の鼓動が更に激しさを増している気がした。
「次の日に、またポストに逢えて、中にちゃんと返事が来てた。…それがこれだ。」
みつあきくんは、ポケットから取り出した手紙を歩きながら、ゆういちろうくんに渡した。
ゆういちろうくんは、高まる緊張をおさえながら、ゆっくりと手紙を開いた。
『あきさわみつあきくんへ
ハローハロー!黄色いポストを信じてくれた君のために、君の質問に答えてあげよう。
みつあきくんの質問は、義足になった足で前と同じようにサッカーが出来るようになりますか?って書いてあったよね。
答えはノーだ。今の足で以前のようなプレーは無理だ。…』
手紙には、ゆういちろうくんの涙がポタポタと落ちていた。
『…でも、諦めずにサッカーの練習を続けていれば、楽しいと思えるサッカーが出来るようになるはずだ。あと、今、みつあきくんが頭に浮かべている親友には、何も隠さずに何でも話すようにしなさい。きっと全てが上手くいくはずだ。
参考になったかな。
また運良く黄色いポストを見つけたら、ぜひお手紙を入れてくれ。バイバイバーイ!
へその丘の黄色いポストより』
ゆういちろうくんは、読み終わると手紙を封筒に戻した。
「おれが思い浮かべていたのはお前だよ。だから、ゆうには何も隠さずに本心を話してるんだ。」
「…ありがとう。…何かごめんね、せっかくみつくんは前向きになっていたのに…。」
「謝ることはないよ。さっきも言ったけど、逆の立場だったらおれもきっとゆうみたいになってたと思う。…あれ?」
頂上に着く手前で、みつあきくんは正面を見つめたまま固まってしまった。その様子を見て、ゆういちろうくんが正面を向くと、頂上には黄色いポストがこちらを向いて立っていた。
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