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「ああ、そうだったね。あの黄色いポストは私が9つの時に、へその丘に立てられたんだ。」
「え?おばあちゃんの子どもの時が始まりってこと?」
よしのりくんは興味津々に身体を乗り出しながら質問した。
「そうだよ。あのポストはね、本来のポストとは違った役割が合ったんだ。」
「…手紙を入れるためじゃないってこと?」
「うーん、手紙を入れるってのはその通りなんだけど、ほれ、あんな丘の頂上にわざわざ郵便屋さんが取りに行くのは大変だろ?」
よしのりくんとさきちゃんは、そうだよねと頷いた。
「あの黄色いポストはね、戦争に行った父親や兄弟に宛てた手紙を入れるものとして、町に残された者たちで造ったものなんだ。…だが、その手紙は宛名の人間に届くものじゃない。無事でいますか、無事でいてください、といった思いや願いを書いた手紙を入れるためのものだった。」
「…それって…。」
「まぁ気休めみたいなものだ。だが、あの当時はこのポストに思いや願いを書いた手紙を入れればその通りになる、つまり家族は無事に帰ってきてくれるって…皆信じていたんだ。…私も父さんが無事に帰ってきてくれるようにと手紙を入れたんだがな…。」
おばあちゃんは、目を潤わせながら言葉を詰まらせた。
「…おばあちゃん。」
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