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※1 始まりの日
赤く燃える空、ひび割れたコンクリート、窓ガラスが割れている高層ビルや泣き叫び逃げる人々。
そんな非日常の景色をぼんやりと見つめる自分。
(あぁ……またこの夢か)
高校生になった辺りから少しずつ見るようになったこの夢。
25歳になった今では夢の中でも自由に動くことができるようになった。
(何も変わらないな。夢の内容も……俺も)
目の前には今にも巨大な獣型の化け物に食われてしまうであろう親子。
俺が走って押し出せば彼女らは助けることができるだろう。
(夢の中でも変われないなら現実なんて……)
もっと変えられないだろう。
そんなことを思いながら、目の前で親子が臓物をまき散らしながら食べられる光景を吐きながらもしっかりと見る。
(いつか……いつか助けるから。俺に、もう少しの勇気が出た時は必ず……)
彼女達の悲鳴が耳に残るのを無理やり無視して血溜まりを抜けて歩みを進めると、いつもと同じく黒と赤を基調とした機械の巨人が片膝をついてこちらを見ていた。
「まだ、足りない」
(足りない……ね。こいつが化け物の主であるならば、人間の生け贄的な何かが足りないという意味で取れるのだけど)
どうしてもこいつが悪い奴には見えないし、どちらかと言えば俺のことを見ながら言っているような気がするから、やっぱり俺に何かが足りないと考えるのが妥当なのかもしれない。
「もう、あまり時間はないぞ」
「えっ!?」
機械の巨人はいつもと違う一言を告げ立ち上がり去っていく。
それと同時に、いつもと同じように視界の端から塵となっていく壊れ果てた街を見ながら、「あぁ、夢が覚めるんだなぁ」と感じる。
『時間が無い』という言葉に寒気を覚えながら、目を瞑り、ゆっくりと閉じた目を開けた。
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