34人が本棚に入れています
本棚に追加
オレ、先輩の事を幸せにします!(3)
長いキスのあとで、オレはチアキ先輩に言った。
「先輩、オレ達には、もう言葉なんていらない。っすよね?」
「ああ、そうだな。ノリ……」
チアキ先輩は、オレの手をギュッと握った。
指を交互に入れて恋人結び。
晴れて恋人同士。
嬉しくて、口元が緩む。
ああ、そうだ。
オレは気になっていたことを思い出した。
「ところで先輩」
「なんだ?」
「オレが先輩を呼び止めなかったら、どうするつもりだったんです?」
「ああ、それな。ほら、その紙袋の中に手紙が入っているっていっただろ?」
「ああ……」
オレは、紙袋の存在を思い出した。
「そうでしたね。ははは。どんな手紙なのか、読んでみるかな」
「ノリ! やめろ! もう読まなくていいよ!」
チアキ先輩は、顔を真っ赤にしてオレにつかみかかる。
オレは、それを振りほどいて紙袋から手紙を取り出し、手を伸ばして高く上げた。
チアキ先輩は、「返せ、返せ!」と叫びながら、ぴょん、ぴょんとジャンプして懸命に取り返そうとする。
その姿に胸がトクンと、ときめく。
やべぇ、やっぱり先輩は、オレの先輩は、超かわいい。
オレは、衝動を抑えきれず、チアキ先輩をギュッと抱きしめた。
そして、先輩の耳元でささやいた。
「先輩、手紙返しますって……でも、どんなことが書かれているか、今ここで言ってください」
チアキ先輩は、コクリと頷く。
そして、さりげなく、オレの手から手紙をさっと取り上げた。
「ノリ! お前、さっき言葉なんていらないって言っていたよな? だから、言わない! べー!」
「なっ!」
だけど、先輩のベーの姿に、またしてもオレの胸は撃ち抜かれていた。
チアキ先輩、オレ、先輩の事を幸せにします! 絶対に!
オレの無言の微笑みに、チアキ先輩も、無言のままにっこりと微笑んだ。
最初のコメントを投稿しよう!