ダッシュ！ダッシュ！猛ダッシュ！

ダッシュ！ダシュ！猛ダッシュ！

「というわけで楓花(ふうか)、私の作戦をよく聞きなさい！」
「さ、作戦？」
「ええそうよ。夏のコミピアの会場の立地、そしてあかぽん屋さんのサークルの配置！それらを把握し、敵を知り、獲物を確実にモノにしなければいけない！欲しいものを手に入れるためには、あらゆる手段を講じる必要がある。多少の犠牲を払ってでも、私は必ず新刊を手に入れるっ！」

　あの、これ同人即売会の話なんですが。なんかサバイバルみたいなことになってますが。
　なんて、ツッコミはできない。言えるはずがない。ただ冷や汗を流しつつ、それで？と話の続きを促すことしかできないのだ。

「コミピアは、東京ビックガイドで開催されるわ！あそこに到達するには電車で行くしかないけど、まずどっちの最寄り駅を使うかが問題ね。東京ビックガイド駅か、国際展覧会場駅のどっちにするかよ……！でも実は国際展覧会場駅の方が混雑するのよね。あそこ目の前にコンビニができてそこでグッズ販売もあるから、そこに行列ができて余計人の往来の妨げになるの。だから少し離れていても東京ビックガイド駅にするべきだわ。●●時●●分着の電車に乗るのがベスト……！早く行き過ぎて待っていても追い返されちゃうもの、昔と違って徹夜待機とかできなくなったし！！」

　ばばーん！と地図を持ってきてプレゼンテーション（？）する里代子。

「エスカレーターは最近、右側を走って登ろうとすると警備員に止められたりするから、多少疲れてでも真ん中の階段を爆走するべき！あと、できれば左側に寄って走るのがいいわね、彼女のサークルは西３の会場だもの。地図や案内板を見て立ち止まっていたら追い抜かれるわ！まあ追い抜いてくる輩は全て空手チョップと足引っ掛け攻撃でぶっ飛ばして時間を稼ぐのもありなんだけど」
「いやいやいやいやアリじゃないから！ナシだから！格闘技でもしてんの！？」
「一階で入場券がわりのパンフレットを売っているけど、そこで長々並んでいたら時間がかかりすぎる……！その間に新刊は売れてしまう！実は入場パンフは二階でも売ってるわ、中でエレベーターで繋がってるんだもの。狙い目は二階！二階のパンフの方が並ばずに買える！私は去年学んだ！というわけで二階の、それも一番奥の列が空きやすいからそこへダッシュよ！」