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「えっ!?ちょっと待って!ぼくが送ったメッセージが、キミが持っていたタキなんとかに入って来たってこと!?」  ぼくは仰天した。それに対して、彼女は説明する。 「先ほど説明したように、光の速度を超えると因果律は逆転する。このメッセージは、お前さんがこれから送るメッセージとなる」  続けて女の子は話をする。  わたしはこのメッセージの解読にかまけて、アオゾラ鉱機中枢へ「この惑星には知性体が約50億個体棲息する。即刻惑星破壊計画を中断し、知性体の強制移住環境を整備されたし」との報告を怠ってしまった。その結果、50億個体の知性体は惑星もろとも、天体破壊ミサイルによって木っ端微塵に消し飛んだ。  その後、惑星調査隊隊長からの告発によって、アオゾラ鉱機の全構成員が知性体の大量殺戮の罪によって逮捕された。もちろんその中にわたしも含む。  裁判の結果、わたしを除くアオゾラ鉱機の構成員全員が死刑、アオゾラ鉱機の所有する手形・証券・不動産その他の全資産もわたしが所属していた星間共同体が没収することになった。  わたし自身は触法少年未満であったため、極刑には至らなかった。しかし、世論は「通信要員の少女こそが知性体大量殺戮事件の張本人である。即刻極刑にすべし」という方向に傾いていた。そこで二審、三審と審議を重ねた結果「極刑ではなく、光子ロケットによって星間共同体からの永久追放処分とする」との判決が下された。  わたしは強制的に光子ロケットに乗せられたが、星間共同体からの慈悲によって「行き先を自由に決定しても良い」との通達が出された。そこでわたしは超光速通信の発信元を行き先として希望し、星間共同体を後にした。  長い旅路の果てに、わたしは約12年前に発信元のチキュー星に到着した。当時、この辺りは大きな戦争の直後だったらしく、一面の焼け野原となっていた。その後、わたしは泥水を啜り、草を食み、生ゴミを漁り、時折空き瓶を拾って酒屋で換金してもらい、その金で喰う焼き鳥やおでんを唯一の愉しみとし――その間、チキュー星からは次第に廃墟が消えてゆき、ビルが増え――そして今日この時、遂に発信元に辿りついた。
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