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「ここで君たちの願いを共鳴させることができれば、ほかの人間に影響なく、太郎になんらかの作用をもたらすことができるだろう。でも、太郎はもちろんのこと、君たちにも何が起きるかは全くわからない。これはある意味リスクでもある」
上野がこちらを見た。親子というだけあって、その視線というか雰囲気はやはり似ていると、この時初めて思った。
「それでもいい?」
上野はただ一言そう問うてきた。
「俺は問題ない。でも、それじゃあ君が」
「私だって、大和と同じくらい真央に会いたい」
彼女の言葉は食い気味だった。俺の憂慮を言葉ごとかき消そうとしているかのように、力強いものだった。もちろんこれは俺の問題であって上野を巻き込むべきものではないと言うことはわかっている。
だけど、彼女の「会いたい」というその気持ちが痛いほどに伝わってきてしまって、本当は断りたいその申し出を拒絶することは、どうしてもできなかった。
「決まりだな」
お父さんはそう言うと立ち上がった。そして、右手を軽く上にかざした瞬間、その右手から同心円状に光のようなものが少しずつ広がって行った。
驚く暇もなく、部屋中が光で包まれる。それはまるで周りの光景が世界が少しずつ剥がれ落ちているようで、その感覚も以前経験したことがあるように感じられた。
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