第25章 気持ちは誰に向いてる?

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俺の家はここの3階だった。ある程度大きくなったらそうでもなかったけれど、小学校低学年くらいの時まではここを上がりきるのも大変だったことをこの時ふと思い出していた。 
映像が少しずつ明瞭になっていく。だからだろうか、登ろうと階段に足をかけようとしたその時、俺はふと自分の記憶に引っかかるものを感じた。
 そして、何気なくその集合住宅地から離れてある場所に向かう。どうして自分がこんな行動をとっているのか自分でもよくわからなかったけれど、しばらくして目の前に現れたその場所を目にした時、その記憶の正体が少しずつ明らかになってきた。
 その場所はとある公園だった。
 子どものころよく遊んでいた公園だ。どこにでもあるような内装に、どこにでもあるような遊具の数々。特徴的なものといえば、中央にある大木と端の方に置かれているコンクリートでできた熊の置物くらいだ。
 小さい頃はここで透と毎日のように遊んでいたことを思い出す。といっても家でゲームばかりやっていたら怒られるからわざわざ公園に来てゲームをしたという爽やかさゼロの思い出だけど。
 にゃあ!
 俺が公園に足を踏み入れようと一歩歩き始めたそんな時だった。
 何か訴えかけるような、そんな声が俺の耳に届いてきたのは。
 何故だかドクンと胸が高鳴った。気がつくと俺は必死にあたりを見渡していた。
 体が少しだけ震えているように感じる。息が荒くなる。いつ過呼吸になってもおかしくないくらいのこの体の反応は動揺なのか興奮なのか自分でも理解不能だった。
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