第25章 気持ちは誰に向いてる?

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夢を見ているような気分だった。 
ふわふわと体が浮遊するような感覚は今までに味わったことのないものだった。まるで雲の上で寝っ転がって昼寝でもしているような、なんとも言えない心地よい感じ。
 今すぐにでも、何もかも忘れて眠ってしまいたい衝動に駆られる。だけど、なんとなくそれは悪いことのようにも思えてきた。
 目の前は真っ白だ。あたりを見回したわけではないけれど、周りには何もないことが何となくわかった。
 もちろん、誰もいなかった。
 だけど、それが寂しいだとか辛いだとかは全く思わなかった。それどころか妙に心の中がスッキリしているし、体もなんだかとても気持ちが良かった。
 そして、しばらく考えた俺は、ゆっくりと目を閉じた。
 眠いんだから眠る。当たり前のことだ。それに、眠ったならまた起きればいい。
 今は周りにあるもの何もかもを受け入れてゆっくり休みたい。心からそう思ったのだ。
 その時だ。
 ふと、遠くから何かが聞こえたような気がした。
 初めて聞くような、聞き慣れたような、判断がつかない複数の声。最初、何を言っているのかは全く分からなかったけれど、それは徐々にはっきりと聞こえるようになってくる。
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