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目が覚めると、まず目に入ったのは見知らぬ天井だった。ああ、どこかのアニメでそんな描写を聞いたことがあるなと、そんなどうでもいいことを考えてしまうくらいに頭はボーッとしていた。
そしてしばらくしてから今俺の頭の下には何か柔らかいものが鎮座していることに気がついた。明らかに俺がいつも愛用している枕ではない。俺の枕からはこんな女の子みたいな芳香はしない。
ふと、ギュッと右手に心地よい圧力がかかった。
そちらのほうに目をやると、誰かが俺の手を握っていた。
しばらくすると、自分の頬にに温かい液体がぽとりと落ちた。
「よかった…。このまま起きないんじゃないかって思った」
その声、そしてその顔に、俺は安心感を覚えると同時に、ギョッとしてしまった。上野が涙を流している姿が、あまりにも驚愕の光景に見えてしまったからだ。どうしてそう思ったのかはわからないけれど。彼女がこのような顔を見せるとは夢にも思わなかったのだ。
そして、しばらくして俺の脳はいろいろなことを思い出した。
彼女はついさっき駅の近くで出会った少女であり、彼女によって俺が以前別の世界を作り出した元創造主だったという話を聞かされて。
そして、その世界にいた神田真央に再び出会うために、彼女と協力し新しい世界を作り出したのだった。
こうやって頭の中で言葉に出して確認すると、改めてカルトじみていると思う。俺は気がつくと小さく苦笑していた。
その心情を一言で説明することは難しいけれどそれは決して何かに対する嘲笑なのではなく、ましてや呆れてしまったわけでもなかった。
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