第25章 気持ちは誰に向いてる?

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「俺たちが気づいていないだけで、もしかしたら、何かが変わっているかもしれない」というお父さんの別れ際の言葉がずっと頭の中に残っていた。 
そして、もしも何か変わったことがあったら、もしくは気づいたことがあったらお互いにすぐに連絡するという約束がすぐにでも果たされることを願いながら俺は帰路についた。
 「ただいま」
 「あら、おかえり」
 すぐに声をかけてくれたのは母さんだった。いつもこの時間にはいないはずの母さんから声がかかったことに違和感を覚えたが、そういえば今日はクリスマスだった。毎年この日は早く帰ってきてくれる母さんはなんだかんだで良い母親してくれていると思う。
 しかし、申し訳ないが今はそんな母さんに親孝行しようとか、たまには手伝いの一つでもしようとかそんなことは頭の片隅にも浮かばなかった。まあ、普段からそんな考えは1ミリも持ってはいないけれど。
 俺が見ていた夢は夢じゃない。上野たちが俺が眠っていたと言った間に、きっと俺は何か大事なことをしていたんだ。
だとしたらどうしてそれを覚えていない。
 とても大事なことを、俺はどうして忘れてしまっているんだろう。
 後ろから母さんが俺の名前を呼ぶ声が聞こえたけど何も返せなかった。そのまま二階へと続く階段をゆっくりと上がっていく。
そして、自室に入りベッドに顔から倒れこんだ。
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