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「ハーゲン奢ってやるから、許してくれ」
「1週間だからね」
そう釘をさすと梢は梅田に一礼して、そそくさと去っていってしまった。
ちなみに彼女には太郎を連れ出すことは話してある。あいつだって太郎のことは心配だろうし、こんな協力をしたところで何の得もないことくらいわかっているはずだ。しかし、どうしてか彼女はそれに関しては何も言ってはこなかった。
想像でしかないのだけど、もしかしたらあいつの中にも太郎が真央として生きていた世界の記憶の破片みたいなものが残っているのかもしれない。今回上野がどうして俺たちを招集したのか、それは俺にもわからないけれど、多分梢の中で今回は協力すべきだという理由のない決定が下されたのだと思う。
…などと、我が妹の心中に想いを馳せていると、ふと隣に立つツインテールの先が揺れた。
そして、目が合う。
なんとなくドギマギしてしまった。それは彼女も同じだったのか、二人同時に目をそらした。
「えっと…。久しぶりやね。元気してた?」
ぎこちない口調で梅田が話しかけてきた。彼女とはこの半年間電話などで色々とやりとりをしていたが、こうして面と向かって話をするのも半年ぶりのことだから、俺の方もやや緊張してしまった。
「まあぼちぼちってとこかな?梅田は?」
聞かれたことに対しては誠実に答え、聞き返すのが正しいコミュニケーションだとどこかで聞いたことがあった俺はまさしくその通りにした。
が、しかしそのような手法は関西人には通用しなかったのだろうか、急に梅田が黙り込んだかと思うと、なんだか不穏な空気になってしまった。
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