第26章 幸せになってほしい

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「で、その話が本当やとして、なんでわざわざ私に教えてくれたん?」 
上野はその率直な問いかけに、率直に答えた。
 「私にとって千里も大事な人だから。千里が望むなら事実を伝えたかった。ただそれだけ」
 やだ、この娘、男前…。梅田も同じことを思ったに違いない。あからさまに顔を真っ赤に染めた。
 「そんなこと言うん…なんかずるいわ」
 全くの同感だ。だけど、上野にも他意はないのだと思う。ただただ脳内で浮かんだ言葉をどのフィルターも通すことなく直接伝えただけなのだ。彼女と出会ってから約半年。こういう面はところどころ見せてきた彼女だったけれど、もっと前から彼女のこういう性格を知っているような感覚もあった。そして、そのことがさらに上野の話に信憑性を持たせているような気がした。
 「ほんで、この猫ちゃんがその神田真央って子の…」
 テーブルの横で佇んでいる一匹の猫をチラリと見ながら梅田は呟いた。
 そして、彼女は言葉に詰まったかのように俯いた。気持ちはわかる。いきなりこの猫の生まれ変わりが人間だったと聞いて納得するのも難しい話だが、聞いたら聞いたで複雑な気分にもなってしまうものだろう。
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