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「そもそもある生物が別の生物として生まれ変わるには膨大な力が必要。でも、前の世界では大和の力もあったからそれができた」
上野は淡々と言葉を続ける。梅田はなんのことかわからないといった顔で俺に目配せをしてきたが、何も反応を返すことができなかった。
「もしも太郎が今後、人として大和と出会うことを少しでも望んでいるのだとしたら、今この時点で少しでも力をその身に宿しておく必要がある」
おそらく、半年前以前の俺であるなら、言っている意味は全く理解できなかっただろう。まさに今の梅田みたいな反応になったに違いない。
が、前述したように俺はすでに不思議な体験をしている。その立場で今の彼女の話を聞くと、腑に落ちないどころか、全てを理解できたような気がした。
「だから、上野の家なのか?」
俺の問いかけにこくりと上野は頷いた。一方隣の梅田相変わらずは頭の上に大きなクエスチョンマークを浮かべている。
しかし、この時の俺には梅田に対して懇切丁寧に解説をするような余裕はなかった。
一方、上野の方は訳がわからないといった表情を浮かべた梅田に気を遣ったのか
「外の世界とあの部屋は空間が隔離されている。だから、そこで持っている力を発揮しても外の世界にはなんの影響もない」
俺の先ほどの言葉に丁寧に注釈を入れた。ただ梅田が理解した様子を見せることはなかった。まあ、それも仕方のない事だろう。
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