第26章 幸せになってほしい

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「私の力を使うことはできひんの?」 
次の言葉を探す気力もなく、ただただその無音を受け入れているときに不意にそんな声が上がった。
 「え?」
 俺と上野がそれに同時に反応し、同時に視線を向けた。
 梅田の顔は笑っているとも怒っているとも取れない漠然としたもののように見えた。
 「ほら、わたしには隠された力があるんやろ?それ使ったらいいやん」
 「何言ってんだよお前!」
 あまりにも平然と言ってのける梅田に対して、気づけば俺はまたもや声を荒げていた。が、梅田はあくまで軽い調子で、そう振る舞おうと意識しているのかもしれないが、手を小さく横に振る。
 「いや、だから全部使うってわけやなくてほら、シェアするとか。そう言う感じにできひんの?3人で力を出し合えばあんたの身に起きる危険は少しでも柔らぐかもしれんやんか」
 青天の霹靂に直面した人間はこのような顔をするものなのだろうか。そう思うほど上野の顔は目も口も間抜けなぐらい開いていた。おそらく、それは俺も同じことだっただろう。
 が、梅田はそんなことはどこ吹く風と言わんばかりだった。テーブルから身を乗り出して、上野の目をじっと見つめる。上野は明らかに先ほどよりも心騒ぎを覚えているようだった。
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