第26章 幸せになってほしい

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「今、お前に梅田の力が渡ってる状態なのか?」
 「うん」
 上野はコクリと頷いた。
 「何か変わったようには見えないんだけど」
 「自分の中に抑え込んでるから。今千里の力と私が持ってる力を合わせれば、使い方次第でこの星くらいは消し飛ばすことはできる」
 すんなりととんでもないことを口にしたような気がしたけれど、気にするのはやめておくことにする。
 「でも、これでもまだ足りないと思う。大和からも力をもらわないと」
 そのどこか力強さを感じる目線が今度はこちらに向いた。
 「わかってる」
 俺は上野の前にゆっくりと立った。相変わらずじっと真っ直ぐにこちらを見つめてくる上野に思わず後じさりしそうになってしまった。
 梅田は先程からずっとその場にへたり込みながらもどこか恨めそうな顔でこちらを見てきているが、正直それどころではない。
 顔が熱くなり、胸の鼓動が止まらない。まともに上野の顔を見ることができない。
 ファーストキスだとかそういうことを気にするような立場でも性格でもないけれど、さすがにこれはヤバイ。
 チラッと顔を上げて、上野の顔を覗き見る。この時初めて彼女の頬はこの日一番の赤みを帯びていた。それはもう熟したトマトかっていうくらい。いや、お前も恥ずかしいんかい。
 しかし、ここでいつまでも待たせるのも男がすたる。俺は意を決して上野の両肩にそっと手を乗せた。
 ビクッとその体が震えた。
 なんだよ…。そのちょっと緊張したような顔つきは。そんな顔、するやつじゃなかっただろう。
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