第27章 行かなきゃいけない

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当然四年の間に二人と何度か顔を合わせたことはあった。当たり前だけど挨拶くらいはした。でも、それ以上のことはなかった。 
今思えば俺が勝手に気まずさを感じていたのかもしれないが、とにかく大学生活はそれぞれ別々に過ごしたという印象が強かった。
 そんな二人がまさか、付き合うことになるなんて…。まあ、当時から斎藤君は望月さんに好意を寄せていたことは知っているから喜ばしいことなのだろうけれど。
 「そんなことはどうでもいいんだよ。お前マジで女に興味ねぇの?」
 俺としては結構な事実だったけれど、もともと知っていた透にとってはそれは「そんなこと」であることは無理もないことなのかもしれない。俺も気持ちを切り替えてそのしょうもない質問についての答えを探す。
 「そんなわけないだろ」
 それは事実だ。女に興味がないなんてことはない。むしろ、今までそういう浮いた話の渦中にいたことがないだけに、人一倍あると言ってもいいかもしれない。
 「じゃあ、なんで女作らないんだよ」
 真っ当な疑問だと思う。むしろここまで俺に関心を寄せてくれている透に感謝の念さえ覚える。
 だけど、なんて答えたらいいのかは全くもって分からなかった。どう答えるのが正しいのか、そもそも正しい答え方なんかあるのか…。そんなことを考えることが何より不毛であることだけは分かった。
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