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「それはあれだ…。俺は一途なんだよ」
「は?」
なんとなく思いついた言葉を口にすると、透はあからさまに眉間にしわを寄せた。が、今さらそんな反応に後じさりするような間柄でもないので俺はそのまま言葉を続けた。
「心に決めた人をとことんまで思い続ける。そういうタイプなんだよ」
「お前…だいぶ気持ち悪いぞ」
透が真顔で吐き捨てたその意見には俺も同意だった。が、自分の言葉が百パーセント嘘というわけでもないので、何となく言葉に詰まってしまいコーヒーカップを口につけたが、中身は空になってしまっていた。
「千里ちゃんのことはやっぱりなんとも思わないのかよ」
ドリンクバーでコーヒーのおかわりを注ぎに行くかどうか悩んでいる時、不意に透がそんなことを口にした。
なんとなく透の顔を見るのが憚られた。が、見ないわけにもいかずに顔を上げると、それはやけに真摯な顔つきに見えた。いつも軽薄な言動をする奴がたまにこういう顔をするとドキッとしてしまうのはずるいと思う。
「思わないわけないだろ。でも…」
「心に決めた人がいるんだよな。他に」
俺の言葉を待たずして透がこの話を着地させた。自分で言うことはなんとなく躊躇われたので、ありがたかった。
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