第27章 行かなきゃいけない

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「まあ、私が面接官やったら一発合格やけど、私の場合感性がちょっとおかしなってるからなぁ」 
「自分で言うのかよ」
 「大和のせいやん」
 ブスッと頬を膨らませ、梅田はそっぽを向いた。取りようによっては好意をストレートにぶつけてきているとも取れる表現だけど、俺は特にそこに反応することはしないし、彼女も特に何かを期待しているわけでもないようだった。
 「あのさ、今更やけど、やっぱり探しに行った方が良いんやない?」
 「なにが?」
 俺たちの会話は、基本ダラダラと続いていくことが多い、彼女がどう思っているかはわからないが、俺はこのようなスタイルは嫌いではない。
 だから、この時も特に彼女の言葉から何か大切なものを受け取ったわけではなく、ダラリと返事をしたに過ぎなかった。
 「何がって…神田真央に決まってるやん」
 それだけに彼女の口から飛び出たその固有名詞に、俺は固まらざるを得なかった。
 太郎に力を分け与えてもらったあの日以来、彼女がその名前を、少なくとも俺の前で口にすることはなかったからだ。
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