エピローグ

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「大和くんはなんてお願いしたんですか?」 境内に吊るされた灯篭の光に照らされながら、人混みの中ゆっくりと歩いていると、不意に隣の少女が呟いた。バチっと目があったのでなんとなく気恥ずかしくなり足元に目をやると紺色のコートの裾から同系色のスカートが見えた。 「願い事は口に出すと叶わないって言うらしいぞ?」 「たしかに。聞いたことはありますね」 真面目な顔をしてそう答える真央。こちらとしては半ば冗談っぽく答えたつもりだったのに、こうもストレートに言葉を受け止められると若干反応に困ってしまう。 元日ということもあり、すれ違う人誰もかれもどこか舞い上がっているようにも見える。かくいう俺もこうして真央と二人で元日を迎えることができた喜びを密かに噛み締めていた。 「ちなみに真央はどんなこと願ったんだ?」 「さっき口に出したら叶わないって言ったじゃないですか」 だから、こんな何気ない他愛のない会話も楽しくて仕方がない。幸せってものがハッキリと定義できるとは思っていないけれど、今の自分は間違いなく幸せであると確信できた。
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