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「上野だろ?」
俺が問いかけると、彼女は真顔のままコクリと小さくうなずいた。そして
「正解」
と、一切の無駄を省いた返答を口にした。この省エネ具合は間違いなく上野だった。
「え?上野さん、ですか?」
隣の真央は驚いたように腰を跼め、その少女の顔をまじまじと見つめる。それとは対照的に上野らしき少女はじっと真央の目を真っ直ぐに見つめる。その光景を俺は何故だか微笑ましく感じた。
「正確には私の分身。でも、意識は私と通じてるから私自身だと思ってもらってもいい。ただ、もうすぐ効果が切れて分身は消えてしまうから、早速要件を話す」
この分身とやらを目の当たりにしたのは俺にとって初めてのことであるはずだった。でも、過去にこのような場面に遭遇したことがあるような気がするのは、おそらく前の世界で同じようなことを体験したということなのだろう。
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