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「なんや、ただの壺かいなー。しょーもなー」
「それが、ただの壺やないねん。親せきのおっさんが、雑貨の営業やってねんけど、売れへんし重いからお前にやるいうて、アパートにおいていったんや。ちょうど五十センチぐらいのただの茶色い壺や」
「そんな壺をあんなにせまいアパートに、おいていかれたら困るよな」
「そやろう。ほんまに困ったわ。とりあえず、部屋の隅っこにおいといたねん。ただおいておくのって、もったいないって思たんや。ぼくって、好き嫌い多いやん。毎晩、スーパーの閉店前に安くなった弁当を買いに行くねん。けど、好き嫌いが激しいからようさん、おかず残すねん。それをその壺に入れたったねん」
「お前も悪いことするなー」
「翌朝、『そういえば、あのおかずは、どうなったんやろう』と思い出して、壺の中を見たんや」
「どうなってたんや」
「何にもなくなってたんや」
「ほんまかいなー。底に穴でも空いてたんと違うんかいな」
「とりあえず、疲れて寝ぼけてたんやと自分に信じ込ませたんや。その日の晩も、残ったおかずを壺に入れた。すると翌朝も……」
「なくなってた」
「うん」
「こわー。ホラーや」
「そや、ホラーや。これから、まだまだ恐くなるで」
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