プロローグ

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プロローグ

「あっ……──」 思わず乾いた声が出た。 時刻は、深夜の2時。 部屋の床には無造作に脱ぎ捨てられた服。ただ一点、薄暗い照明だけがずっとこちらを見下ろしている。 「気持ちいい?」 私の太ももに顔をうずめて、はげ散らかった頭を必死に縦横と振り続けている。 40代後半くらいだろうか。左手の薬指にはくすんだシルバーの指輪をはめていた。きっと何十年も前に、一人の女性と永遠の愛を誓ったのだろう。 『ずっと一緒にいよう』 『結婚しよう』 生涯一緒にいたいと思った相手ですら、そんな思いは年々薄れ、やがて忘れるのだろうか。 私は手の甲を額に当てながら、少し頬を赤らめてコクンと頷いた。
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