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「杏夏お願い!人助けだと思ってさ!」
人助けの合コンなんてこの世にあるか…。
初めましての挨拶と自己紹介をして、興味も無い話に頷いて、相手がお金持ちだとわかればすぐに食らいつく。私の中の合コンはそんなイメージ。
至って無駄な時間、ハズレたなんて思った日には虚無感に浸るのだろうか。一人で誰の目も気にせず、誰にも気を遣わず食べるご飯の方がよっぽど美味しいに決まってる。
こうやって決めつけで頑なに新しい価値観や世界観を拒む頑固さも、私の悪いところでもあった。
「実はね、杏夏にお似合いの彼がいて〜……──」
絶えず話を続ける親友。
反論を続けようと思ったものの、睡魔で頭がごっそり持っていかれるような意識が遠のくような感覚に陥った。体も重く起き上がる気力なんてあるわけない。話すのですらままならなかった。
その場しのぎの返事を返して電話を切り、ベッドからはみ出た腕で携帯を床に置いた。
カーテンからは冬の光が差し込み、ずっとこちらを見ている。すかさず私も見つめ返した。
──………眩しい。
あぁ、また今日も生きていると愕然とした。
いや、生きているというのはなにか違う。
いつも誰かの手によって生かされていた。
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