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自宅待機という手もあるが、ドライバーに自宅を知られることが嫌だった私は、大人しく"事務所"と呼ばれる場所に出勤していた。
「おはようございます。」
この業界の挨拶は昼も夜も関係無い。
鍵のかかっていないドアを開けると、タバコを片手に複数のモニターと睨めっこしている男性が振り返った。
「あぁ、ほのかちゃん!おはよう!今日もよろしくね!何時まで?」
──"ほのか"。
この店で働く私の源氏名だ。当時、面接をしてくれた人につけてもらった名前だったが、今となっては愛着が湧いている。
1Rの雑多な部屋の玄関に脱いだ靴を揃えて、奥のソファに腰掛けた。
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