プロローグ

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夜なのに汗が滲み出るほど蒸し暑く、まだ蝉の鳴く頃、窓の外ではポツポツと雨の知らせが届いた。 迎えが待っているのでと、挨拶もせずに部屋を出た。私が客なら確実にリピートはしないだろう。 長い廊下を必死に走り、迎えの車に駆け込んだ。はい、と素っ気なくドライバーにお金を渡した途端、堪えていたものが一気に溢れ、それがたった一粒の涙に変わった。 誤魔化すかのように窓の外を見ると、土砂降りに変わっていた。代わりに泣いてくれている、本当にそんな気がしたんだ。 ────18歳の夏、処女を捨てた。 90分35,000円だった。
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