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ある日の夜明け。いつものように出て行こうとしていた羊に声をかけた。
「お前、朝までいたこと一度もないよな」
「仕事だよ。追剥と強盗で暮らしてるお前と違って、こっちは働かないと飯が食えない」
「お前羊だろ? 草でも喰ってろよ」
寝ている狼を見下ろしながら、呆れたような顔で羊が軽く息をついた。
「このコンクリ固めのスラムのどこに喰える草が生えてんだ?」
目が覚めてしまったのか、ゆっくりと上半身を起こして狼が訊いた。
「じゃ、何の仕事してんだ?」
「…………彷徨える仔羊たちを導く牧師」
「うっそだろッ!!?!!」
どう見てもメリノー種の悪魔にしか見えないこいつが教会にいるとかあり得ないだろと、思わず胸中叫んでしまった狼に間髪入れず羊が答える。
「嘘だけど?」
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