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結局、狼はその日もいつもと同じだった。
羊のパイを喰って、羊に喰われる。
まだ薄暗い真夜中。
そっと羊が起きて身支度を整えていると、隣から呪詛の声が聞こえてきた。
「………ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねあのクソ羊クソ変態クソウーパー」
羊に背を向けて寝たままボソボソと呟き続けている狼に羊が思わず突っ込む。
「……クソ羊とクソ変態はともかく、クソウーパーって何? 羊に喰われたショックでついに狂った?」
もはや怒鳴る気力もない。
「……………もう来んな」
力無く零した狼の背後で羊がドアを開ける音がする。
玄関から、軽く笑う声がした。
「そしたら餓死するぜ? お前」
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