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キス
「、、、早く死にたい」
それが彼女の口癖だった。
僕と幼馴染の彼女の16回目の春、僕達は同じ中学校から同じ高校へ進学した。新生活に不安を抱えながらも心弾ませその先を想像する、なんて幸せな未来など全く考えもせずに。
「、、、私の苦痛なんてあんたにはわかんないでしょ?」
それも、彼女の口癖だった。
彼女は中学生の頃、同じクラスの女生徒達から酷いいじめを受けていた。昔は明るくて笑顔がかわいい彼女は中学に上がった途端段々笑わなくなり、虚ろな表情で日々の生活を送っていた。
「、、、今日もする?」
これも、彼女の口癖だった。
僕は彼女の事が好きだ。
君が笑うと嬉しいし、君が泣くと僕も悲しくなる。今にも死んでしまいそうな彼女が少しでも生きていたい、まだ死にたくない。そう感じてもらうために僕はーーー
「うん、早く抱かせて」
これが僕の口癖だった。
「んあっ、、、はっ、、はっ、、、あぁっ、、んっき、もちぃっ、、」
これが今の僕と彼女の関係。こうしているとお互いの存在を認めて、確かめあって、まるで2人しかこの世にはいないと思わせるような心地良さがあったから。
直に伝わる温もりをお互いに感じ取りながら、毎日お互いを貪り、声が枯れるまで求めあった。
「あんっ、、、はぁっ、、ねぇ、キス、キスして」
もう何度目かの彼女のお願い。それはもちろん僕だって応えたい。しかし、それは叶わないことだった。
「、、、付き合ってないからそれは出来ないよ」
これも、僕の口癖だった。
彼女は「そう、、」と呟いたあとまた激しく僕の上で腰を振った。少し寂しげに見えた君に僕は困ったように笑いかける。これはいつもの事。
だってキスしたら、僕が君を殺してしまうから。
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