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セールス
異星種族との接触により、量子頭脳への人格転移技術が実用化されてから随分経つが、私はその技術に懐疑的だった。
偏屈者とも言われるが、そもそも医学が発達し、寿命が延びているので、その必要も感じなかった。
しかし私も年齢を重ね、人格転移業者がセールスをかけてくることが多くなった。
今回はVR(仮想現実)通話で、沢山の経験者達が語りかけてくるというものだった。
『どんな遺産や遺品より貴重なもの、それは先人達の経験と英知では!?』
『人類にとっても、真核生物や多細胞生物への進化に匹敵する大飛躍です』
『貴方もまた、愛する人達と共に永遠に生き続けられるのですよ……』
『常に記憶や人格を更新しながら休眠させた量子人格を、肉体死亡時に活性化させる方式だから、万が一の時にも安心!』
『人類共有頭脳網への搭載が心配なら、より小規模な分離頭脳や、お一人様用分離個体への移植も可能です』
『さすれば貴殿は、自らを銀河系中央の歴史ある種族に優るとも劣らぬ偉大なる存在の一部になることができるであろう!』
(いつの人だよ……ってああ、〝中二病〟とかいうやつだったっけ[笑])
『使用機器及びノウハウは、局部銀河群における生体情報工学のナンバーワン企業のものといえばお分かりでしょう。赤いリボンが目印の、アスモデウス社の特許に係る純正最高級品を使用!』
『将来もっと規制緩和が進めば、様々な分離個体と量子頭脳の往復も自由自在になる!』
『人格転移のご用命は、ぜひこのテラン・シンギュラリティー社へ!』
『可愛いあなた、今予約すれば10%の割引だよ~!』
『また私と一緒に暮らそう!』
……たまりかねた私は、とうとう叫んだ。
『知人や親族、総出で売り込みかけさせるなんてズルいぞ~っ(泣)!』
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